犬の脳炎 治療法
犬に起る脳炎。
ウイルスや細菌などの感染によっておこるタイプと
原因不明で免疫が関与していると考えられているタイプとに分かれます。
脳の障害が起きている部位によって症状は様々ですが、一般的に
けいれん発作、四肢のふらつき、起立困難、失明、旋回、捻転斜頸・・・などが見られます。
院内の血液検査やレントゲン検査では診断することはできませんが、
MRIや脳脊髄液の検査によって診断が可能ですので、多くは専門医のいる大学病院などの受診をお勧めしています。
感染性の脳炎は治療の可能性もあるのですが、
根本原因が分からない壊死性髄膜脳炎(NME)や壊死性白質脳炎(NLE)、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)、特発性脳炎(自己免疫性)などでは、
けいれん発作を内服薬で抑えていくような対症療法は別として、
原因治療は、高用量のステロイドや免疫抑制剤(シクロスポリン)の投与が一般的ですが、
効果があっても一時的であったり、副作用の問題、薬が高価であることなど頭を悩ませることも。
現在、脳炎と闘う子が2頭。
脳炎になるとあっと言う間に亡くなってしまうことも多いのですが、
症状は出つつもそれぞれ1年以上がんばっています。
2頭とも他院にて大学病院へ紹介され脳炎と診断。
その後それぞれの紹介病院にて継続的にステロイドやシクロスポリンなどの投与を行い治療。
症状はある程度安定していたのですが、ひどい副作用に悩まされていました。
そんな中、縁あって当院へ転院。
それぞれ診断された大学病院の先生にコンタクトをとり、現状と今後の治療について相談。
やはりステロイドやシクロスポリンの投与による免疫抑制療法でいくしかない・・・とのアドバイス。
まあしばらくは、副作用はあるものの症状も安定して良かったのですが。。。。。
1頭の子は、ある日を境にみるみる悪化
いままで効いてた薬も効果はなく・・・
新たな薬をくわえるものの、それもダメ。
「これ以上他にあるのか?」と悩むこと数日。
そこで、定期的に出席している神経科の勉強会にて、
「現状こんな感じなのですが、なにか他に治療法ありませんか?」とダメ元で質問しました。
すると、先生は即答で
「今はこんな薬を使ってますよ!効果ありますよ!」
「え!!!」
元々神様みたいな先生ですが、まさに神様(興奮しすぎて何を言っているのかわかりません)
その治療方法が記載されている海外の論文を見せていただき、根掘り葉掘り質問の嵐!
病院に帰ってきて、更に調べてみると日本での論文発表(症例報告)もあるではないですか!!
http://www.hokkaido-juishikai.jp/wp/wp-content/uploads/2014/05/1101-09.pdf
翌日には飼い主さんに提案。
薬を手配して投与開始。
もう1頭の子の飼い主さんにも提案し、もちろん投与開始。
投与プログラムが終了するのは約1年後。
とにかく今の状態がキープできることを祈ります!
??・・・
お気づきの方いらっしゃるかと思いますが
そう、「キープ」なんです。
中にはかなり炎症が治まる子もいるらしいのですが、
一般的には効果があったとしても発症後3〜4年しか生きられません。
残念ながら現時点ではこれ以上の治療法はなさそうです。
根治は・・・なかなか難しいというのが現状です。
こんな脳炎、予防法もありませんのでとにかく診断し、あとはやるしかありません。
このようなことが身につけられる。
専門家の勉強会に出席していて、ほんとうに良かったと思う瞬間です。
全ての科の最新論文を読みまくることは正直できません。
当たり前のことですが、「現役中は、ずっと勉強」ということになりそうです。
これから先も山あり谷ありだと思います、飼い主さんの介護も必要です。
病院としても出来るかぎりサポートします。
Lちゃん、Sちゃん。一緒にがんばっていこう!!
追伸
この記事をご覧の方々へ
経験して分かってきた各種脳炎治療に関しての記事を掲載しています。
あわせてご覧ください、治療法の参考になれば幸いです。
http://okubo-vet.jugem.jp/?eid=865595
おおくぼ動物病院 www.okubo-vet.com
犬の膀胱炎 こんな感じは要注意
血尿や頻尿(何回もおしっこに行く)といった症状が見られます。
メス犬の方がなりやすく、多くは外陰部より侵入した細菌が原因で発症します。
よく、我慢するとなるようなことをヒトでは聞きますが、犬ではそのようなことはありません。
何となくポピュラーな病気なだけに意外と軽視されている感がありますが、
健康な犬はそうそうかかる病気ではありません。
ほんとうに単発の発症ならともかく、「あら、また膀胱炎だ?!」は異常です。
そこには、何かしら再発してしまう原因が隠れています。
抗生物質の投与でなんとなく症状は治まり、「治った、治った」と思いきや・・・
検査をするとひどい膀胱炎(慢性膀胱炎)、更には細菌もいっぱい、
なんてことが良く見られます。
そんな子の場合は、体調の変化によって症状が出たり治まっていたりすることがあるのでは。
例えば、
「ここ2〜3ヶ月の間に何度も膀胱炎を繰り返す。」
「2〜3年前から年に1〜2回だが膀胱炎症状が見られる。」
これ、おかしいです。
検査で原因を明らかにする必要があります。
「いままで全くなかったが、突然膀胱炎症状が見られた。」
治療の後、再発するのかどうか?経過観察してください。
写真:膀胱に造影剤を入れて撮ったレントゲンです。
膀胱の先端の粘膜の不整が見られます、見にくいですが膀胱壁の肥厚も確認できます。
これ、結構な膀胱炎です。
写真:このあいだ、慢性膀胱炎の治療のため手術をすることとなったUちゃん。
手術後2ヶ月経過、現在良好です
犬はしゃべれません。
症状は目につくのですぐに分かりますが、
「症状が出ていないこと=病気ではない」とは限りません。
検査をして、原因を突き止め再発させないような治療をすることが大切です。
「抗生物質を飲んで一時治まる」は対症療法であって、原因治療ではありません。
当然、原因が分かったうえで対症療法しかないといったこともありますが・・・
「うちの子はすぐに膀胱炎になるのよね、おしっこがまんしてるからかしら?!」
散歩中のこんな会話、検査をお勧めします。
おおくぼ動物病院 www.okubo-vet.com
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