老猫の尿道狭窄 おしっこが出ない 会陰尿道瘻
一般のご飯が良くなっているせいか、猫のストラバイト結石が少なくなったこのごろ。
オス猫でおしっこが出なくて困るといった症例は、当病院でも診る機会が減りました。
結石による尿道閉塞を起こしても、結石の摘出手術や処方食への変更によりほとんどが改善してしまいます。
それでもやっぱり起る尿道閉塞。。。
そんな少ない症例のなかで起る時は・・・閉塞させないような手術が必要となることがほとんどです。
今回は、御年18歳になる猫のKちゃんの話です。
最初は獣医師会でお世話になっている先生からのお電話でした。
「先生、おしっこ全く出なくなってしまった子がいるんだけど・・・
ただしすごい年で数年前から腎不全もあるんだよ。」
と先方の先生も困った様子。
「分かりました。とにかく診ないと分からないのでウチで引き受けます。」
とお返事をすると。
間もなくして飼い主さんとともに来院されました。
早速、身体を触ってみると・・・パンパンの膀胱が触知されました。
それはあまりにもパンパンすぎて、これから検査をする上で膀胱破裂しても困るためまずは尿を抜くことに。
ただし、尿道にカテーテルは入りません仕方が無いので、外から針を刺して地道に抜いていきます。
そして数分後、何となく普通の膀胱の大きさくらいになったところで検査再開です。
血液検査、レントゲン、エコー。
尿道を閉塞させているような結石の証拠はありません。
再度尿道にカテーテル入れてみると・・・やっぱり入りません。
尿道口から1センチ弱のところでつかえてしまいます。
それでは次の手段。
カテーテルよりももっと細い管を使ってゆっくり挿入。。。入ります、1センチを超えたあたりまでOK。
抜いてみると。。。尿線は極細ですがおしっこが出てきました。
が、すぐにまた詰まる。詰まりの原因は先ほどエコーで確認した沈殿物。
っと、だいたい病態が把握できたところで証拠とりの尿道造影。
尿道出口は糸のように細くなっていました(尿道狭窄)。
繰り返してたであろう尿道炎により徐々に狭くなり、それでもおしっこは出ていたので飼い主さんも気づかず。
ただし、病気はゆっくり進行。
膀胱内に余剰したおしっこは慢性膀胱炎を引き起こし、ドロドロのおしっこへ変貌。
ついに出なくなってしまったのでしょう。
と決まれば、会陰尿道瘻手術の適応です。
超高齢です、腎不全もありますが、短時間の麻酔ならいけそう!!
というかおしっこが出ないんじゃやるしかありません。
術後2週間、抜糸も済んでおしっこも立派に出るようになりました
心配していた腎不全の悪化も無く、Kちゃんもすこぶる元気で機嫌がいい!
あと2年がんばって20歳を目指してもらいたいと思います。
手術した尿道はそのくらい余裕でもつと思います
おおくぼ動物病院 www.okubo-vet.com
久しぶりの大学病院です
昨日は久しぶりにA大学動物病院へ行ってきました。
実は他院からの転院で困った症例(医原性の食道閉塞の猫)があり、
我が師匠のW先生に相談したところ・・・
「何とかなるんじゃない」の一言で受診が決定。
私もお手伝いさせていただきました。
結果は・・・バッチリ!!まさに神様!!
飼い主さんも大変喜んでおられ、本当に良かったです。
気の知れた研修医仲間とも久しぶりに会い、新人の先生とも交流。
もちろん自分の症例以外もしっかり見学。
私のところにも毎月やってくる猫の尿管結石・・・
W先生の扱う数は半端じゃありません。
そしてやっぱり悩んでおられました。
朝から晩までフルパワーで働いてきました(ちょっと体が重い)
W先生、M先生、猫に変わって「ありがとうございました」
大学病院、たまには行かないとだめですね。
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猫 胆管閉塞 黄疸 胆嚢‐空腸吻合術(手術)
肝臓に隣接している胆嚢(たんのう)という臓器があります。
胆嚢の中には胆汁(たんじゅう)が貯留しており、脂肪の代謝に一役かっています。
胆嚢内の胆汁は、胆嚢‐胆管(たんかん)‐総胆管(そうたんかん)というルートを通って、
十二指腸に排泄されています。
胆管閉塞は、胆管もしくは総胆管において胆汁の流れがストップしてしまう病気です。
閉塞してしまう原因はさまざま、犬も猫も起こります。
- 結石(胆石)による閉塞。
- 胆嚢内で胆汁がどろどろに固まってしまい流れない(胆嚢粘液嚢腫)・・・犬で診られます
- 胆嚢炎や胆管炎による閉塞
- 膵炎による二次的な閉塞。
上記1〜3では、胆嚢自体の問題ですので、胆嚢を摘出するなり何なりで対応すれば良いのですが…
(もちろんそれはそれでリスクはあります。それはまた次の機会に)
困るのは、4番目の膵炎です。
膵臓は、胃と十二指腸にへばり着いている臓器です。
膵臓で作られる膵液は膵管を通って十二指腸に排泄されます。
!!!お気づきでしょうか!!!
そうです、胆汁も膵液も十二指腸に排泄されます!!!
しかも猫の場合は、総胆管に膵管が合流して1本となり十二指腸に開口しているので
急性の膵炎を起こした場合には炎症の余波により胆管閉塞(胆汁うっ滞)が起きやすいのです。
くわえて老齢の猫では、膵炎・胆管肝炎・腸炎が単独または併発して起こることがしばしばあります。
(これらを三臓器炎と言います)
軽い子はまだしも、このような病気がガツンと発症すると、
ご飯は食べず、嘔吐は続き、見る見るうちに黄色くなっていく(黄疸)・・・
最悪のパターンで進行してしまいます。
炎症の程度にもよりますが、急性膵炎が治まるまでにはある程度の時間が必要です。
膵炎の発症自体も命が危ないく、治るのを待っていられる体力があればいいのですが、
閉塞性の黄疸が併発してしまうと膵炎とのダブルパンチでどんどん体がまいってしまいます。
こうなってしまうと行える治療は限られてきますが、最期の手段「外科の力」に頼ります。
このまま内科治療で押しても経験的にじり貧になっていくケースが多く、
かなりリスクのある状況での手術となりますが、
今後の治療のスタートラインに起たせるためにはこれしかありません。
胆嚢・胆管の洗浄と胆嚢-空腸吻合術
簡単に言うと
「胆管・総胆管の閉塞の解除も行い、さらには胆嚢と空腸を直接結んで胆汁の流れをもう1ルート確保しよう」
という考えの手術です。
当院で実際に行っている手術の写真です。
先ほども言ったように、手術のあとが勝負となってきます。
正直、助かる子とそうでない子といます。
あきらめずに、ここまでやってみる。
こういったことも治療の選択肢の一つです。
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